浄土宗大本山増上寺様所蔵「高麗版大蔵経」デジタル撮影

 令和7年(2025年)4月に「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」(増上寺三大蔵)が、ユネスコの「世界の記憶」に登録されることが決定いたしました(祝 増上寺三大蔵 ユネスコ「世界の記憶」国際登録決定)。三大蔵のウェブ公開に当たっては、デジタル化の一部を弊社がサポートしており、この度の登録決定を記念して、下記にご紹介します。

「世界の記憶」とは?文部科学省HP「世界の記憶」より)
 「世界の記憶」とは、世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進することを目的として、ユネスコが平成4年(1992年)に開始した事業です。「世界の記憶」が掲げる目的には下記の3つがあります。
 ①後世に伝えるべき記録遺産を最も適した技術を使って保存していくこと
 ②デジタル化などを通じて誰もが普遍的にアクセスできる環境をつくること
 ③記録遺産の存在や重要性の認識を高めること

「増上寺三大蔵」の概要
 浄土宗の大本山増上寺には、中国の宋代および元代、そして朝鮮の高麗時代に制作された三種の大蔵経(仏教経典の総集)が所蔵されています。これら、総数約12,000点におよぶ「三大蔵」は、17世紀初頭に徳川家康が収集し、将軍家の菩提寺である増上寺に寄進したものです。関東大震災や東京大空襲など幾多の危機を乗り越えて、これほどの規模の大蔵経が伝承されている例は世界でも他に類を見ません。
 さらに、近代においては、三大蔵を底本とする大蔵経が刊行されたことで、今日の仏教研究の基盤が形成されました。このように、増上寺の三大蔵は中世における東アジアの仏教文化と国際交流の軌跡を示す歴史的資料であるとともに、仏教学の発展にも大きく寄与した貴重な文化遺産です。

デジタル時代における「三大蔵」
 三大蔵は仏教経典の総集であると同時に、収録される文献内容の多様性や、文化財としての稀少性から、歴史学や言語学などの仏教学以外の分野においても重要な役割を果たしています。
 令和5年(2023年)11月には、浄土宗開宗850年記念事業の一環として、三大蔵の高精細デジタル画像がウェブ上に公開され、貴重な資料の情報が広く研究や教育の場に開かれることになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 


「浄土宗大本山増上寺所蔵三大蔵」公開ページ
(提供:大本山増上寺)

 三大蔵のうち、宋版および元版については、昭和53年(1978年)~昭和56年(1981年)にかけて撮影されたマイクロフィルムをもとにデジタル画像が作成されており、高麗版については原資料から直接のデジタル化が行われています。弊社では、このうち高麗版約16万カットに加え、宋版および元版の一部について、令和2年(2020年)~令和6年(2024年)にかけて高精細でのデジタル撮影を実施しました。撮影には1億画素の高解像度デジタルカメラを使用し、人文情報学をはじめとする多様な研究分野での活用を見据えた画像データの作製を行っています。

 これらの画像は、デジタルアーカイブの国際規格であるIIIFInternational Image Interoperability Framework)に対応したビューワーを通じて当ウェブサイト上で公開されており、三大蔵の高精細画像を効果的に活用できる環境が整備されています。この公開によって、増上寺の三大蔵は世界中から誰でもアクセス可能な文化的資源となり、デジタル時代におけるその意義は今後さらに高まっていくことが期待されます。

実際の閲覧ページ(提供:大本山増上寺、画像は増上寺蔵高麗版大蔵経 第 001函 天(001) 0001。)

 

イベント情報
今般の「世界の記憶」への国際登録を記念した各種展示が開催されています。
この機会に、世界が認めた仏教文化の粋をぜひご覧ください。

・増上寺(宝物展示室)
2025年419日(土)~ 98日(月)
企画展 徳川家康と増上寺三大蔵

・東京国立博物館(本館 特別1室)
2025年428日(月)~ 622日(日)
特別企画 増上寺の三大蔵―徳川家康寄進の三種の大蔵経―

参考URL
文部科学省HP「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」のユネスコ「世界の記憶」登録決定について