独立行政法人北方領土問題対策協会様
語り継ぐ、北の記憶。
「北方領土デジタルアーカイブ」の要件定義等業務

文脈のなかのデジタルアーカイブ

デジタルアーカイブは、単なる資料のデジタル化にとどまらず、適切なメタデータの付与と標準化された公開インフラの整備によって、研究・教育・地域振興といった多様な用途に開かれた知識基盤となります。

こうした基盤整備が国家的な政策として推進されるなか、特定の地域・テーマに特化した専門アーカイブの構築は、資料の文脈を保ちながら重層的な情報の蓄積・公開を可能にするという点で、際立った意義を持ちます。

北方領土が抱える三つの制約

歯舞群島・色丹島・国後島・択捉島の北方四島は、第二次世界大戦の終戦以来、日本人が自由に訪問できない状況が続いており、現地調査はほぼ不可能です。この訪問困難という地理的制約に加えて、戦前・終戦直後の生活を直接知る元島民の平均年齢はすでに90歳を超えており、生きた記憶が失われつつあります。さらに、若年層における北方領土問題への認知度・関心は低迷しており、次世代への問題意識の継承もまた深刻な課題となっています。

これら三つの制約——訪問の困難さ、記憶の担い手の高齢化、そして次世代の関心の低迷——が、デジタルアーカイブの役割をとりわけ切実なものとしています。当社は、このような状況においてこそテクノロジーが記憶の橋渡し役を担いうると考え、独立行政法人北方領土問題対策協会が構想する「北方領土デジタルアーカイブ」のシステム要件定義フェーズへの参画に至りました。


北方領土デジタルアーカイブ トップ画面

「北方領土デジタルアーカイブ」(画像提供:独立行政法人北方領土問題対策協会)

システムの公開と機能的特長

2026年3月に公開された本システム(「北方領土デジタルアーカイブ」の公開について)は、資料データベース機能とストーリーテリング機能という二つの柱から構成されています。

資料データベースでは、国内複数機関が保有する北方領土関連の写真・書簡・地図・証言映像などのデジタルデータを一元的に集約し、地域・年代・カテゴリによる複合的な絞り込み検索が提供されています。メタデータの設計に際しては、資料の出所・権利関係・地域情報など公開・活用に必要な属性を記録できる構造を採用しており、将来的な外部データベースとの連携も可能な設計としています。


資料データベース画面

資料データベース(画像提供:独立行政法人北方領土問題対策協会)

一方のストーリーテリング機能は、3D地理空間プラットフォームを基盤とし、北方四島の地形データと各種資料を組み合わせながら、当時の暮らし・産業・文化・自然環境をストーリーとして提示します。色丹島の捕鯨業の歴史、択捉島の食文化や山野から海へ続く風景、北方領土における郵便制度の変遷など、個別テーマに沿ったコンテンツが3Dマップ上に展開されることで、資料と地理空間の結びつきが直感的に把握できます。


ストーリーテリング画面

ストーリーテリング(画像提供:独立行政法人北方領土問題対策協会)

資料データベースと3D地理空間プラットフォームの統合的な連携は、本システムの根幹をなす特長といえます。この連携を実装するために要件定義の過程では、先行するデジタルアーカイブ事例との比較検討、アーカイブ機関・研究機関の有識者へのヒアリング、プロトタイプを用いた技術的実現可能性の検証を重ね、システム要件の精緻化を図りました。

時間・場所を問わないオンライン公開によって、北方領土問題に馴染みの薄い若年層を含む幅広い層へのアプローチが開かれます。

記憶を語り継ぐアーカイブとして

元島民の記憶を宿す写真・書簡・地図・証言映像——これらが地理空間と物語の文脈の中に位置づけられるとき、物理的に手の届かない島々の歴史は確かな実感を帯びて次世代へ伝わるはずです。記憶の担い手が少なくなっていく今こそ、こうしたシステムの役割はいっそう大きくなります。

当社は要件定義への参画を通じて、行政・博物館・学術機関の枠を越えた本デジタルアーカイブの可能性の広がりを確信するとともに、今後の継続的な発展に期待を寄せています。

北方領土デジタルアーカイブ

https://portal.digital-archives.hoppou.go.jp/