公益財団法人前田育徳会様
創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」
文化財デジタル撮影

前田育徳会の百年——文化財保全の先駆的使命

公益財団法人前田育徳会は、大正15年(1926年)2月26日に育徳財団として発足し、令和8年(2026年)に創立百周年を迎えました。尊経閣文庫の通称で知られる同会は、国宝22件・重要文化財77件を含む収蔵品および建造物を保存管理し、日本有数の文庫として白眉の存在を示しています。

設立を主導したのは加賀前田家16代当主・前田利為です。大正12年(1923年)に発生した関東大震災で多くの文化財が灰燼に帰するのを目の当たりにした利為は、先祖伝来の家宝を永く後世に伝えるため、私蔵を公益法人の管理に委ねるという先見的な決断を下しました。

尊経閣文庫 図書閲覧所

前田育徳会

このような経緯から、前田育徳会は旧大名家による文化施設の先駆として歴史的に高い評価を受けており、その建物(図書閲覧所・書庫・貴重庫・門及び塀)は平成25年(2013年)8月に国の重要文化財に指定されています。

主な収蔵品には国宝「金沢本万葉集 第三、第六巻残巻」(藤原定信筆)をはじめとした歴史・文学研究における一級史料群、天下五剣の一振として名高い国宝「太刀 銘 光世作(名物 大典太)」、他に類を見ない近世前期の工芸標本集成である重要文化財「百工比照」、絵画・漆芸・陶磁器など多岐にわたる名宝が収蔵されています。
これらの収蔵品のうち古典籍・古文書は研究者の閲覧を受け入れており、学術研究の進展を支え続けています。当社はそれら貴重史料の写真複製頒布において、永年にわたり力添えをいたしております。

特別展「百万石!加賀前田家」——歴代の事績とその精華

同会の創立百周年を記念した特別展「百万石!加賀前田家」が、2026年4月14日から6月7日まで東京国立博物館 平成館を会場に開催されています。東京では60年ぶりとなる大規模な展覧会です。百万石の城下で花開き今日に受け継がれる加賀文化の真髄に迫るとともに、文化財保全の先駆を成した利為の描いたとされる美術館の夢が、ここに結実しています。

特別展パンフレット

前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」メインビジュアル

展示は5つの章で構成されています。

第1章
加賀前田家歴代:初代・利家ゆかりの甲冑・陣羽織をはじめ、歴代当主の武具が勢揃いします。
第2章
百万石の文化大名:書画・舶来品・調度などの蒐集品が集結。
第3章
加賀前田家の武と茶の湯:名刀と茶道具の逸品が顔を揃えます。
第4章
天下の書府:古典籍・工芸標本・能装束・将軍家の婚礼調度品を展観。
第5章
侯爵前田家のコレクション:旧前田家本邸に飾られた洋画・工芸品・オートグラフなど近代の蒐集を紹介します。

各時代の前田家文化の層の厚さを実感させる珠玉の展覧会です。

デジタルアーカイブが照らす名品——記録と活用の広がり

本特別展の開催に先立ち、当社は前田育徳会所蔵の主要出品作品のデジタル撮影を担当しました。

金小札白糸素懸威胴丸具足
甲冑
熨斗烏帽子形の変り兜、金色に輝く小札と白糸が一体となって初代・利家の威容を今に伝える重要文化財「金小札白糸素懸威胴丸具足 前田利家所用」を筆頭とした歴代当主の甲冑。

幟 白練緯刺し子地鍾馗図

利家が好んだ鐘馗図を墨画彩色で描き、3メートルを越える巨大さで軍陣を誇示した重要文化財「幟 白練緯刺し子地鍾馗図 前田利家所用」。

松唐草葵紋散蒔絵婚礼調度
婚礼調度
文政10年(1827年)に徳川11代将軍家斉の息女溶姫が加賀前田家13代当主・斉泰へ輿入れした際の婚礼調度であり、金薄肉高蒔絵の文様が美しい「松唐草葵紋散蒔絵婚礼調度 溶姫所用」。

これら名品の質感と色彩、緻密な意匠を高精細デジタルカメラで写し取り、アーカイブとしての客観的なライティングのもとで再現した成果は、本展の公式図録でご覧いただけます。

公式図録

前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」図録表紙

なお、本展会場でパネル掲載されている溶姫の輿入れ行列が御殿門――赤門をくぐる様子を描いた東京大学総合図書館所蔵の錦絵「松乃栄」(三代歌川国貞筆)についても、2019年度東京大学デジタルアーカイブズ構築事業において当社が撮影を担当しており、デジタルアーカイブが文化財と文化財をつなぐ、その活用の広がりを感じられます。

松乃栄(東京大学総合図書館所蔵)

『松乃栄』(東京大学総合図書館所蔵)を改変

また当社では、重要文化財指定の尊経閣文庫 図書閲覧所・貴重庫・書庫の三棟を一画面に収めたドローン空撮も手がけました。地上からは得られない俯瞰構図をとらえたこの一枚は、昭和初期に設計された三棟の配置と静謐な佇まいを記録しています。
2026年2月に催された同会の創立100周年記念式典では、式典の記憶とともに百年の歩みを象徴する一葉として、記念品クリアファイルに採用され、式典参加者に進呈されました。

クリアファイル

前田育徳会創立100周年記念式典 記念品クリアファイル

百年のその先へ——紡ぐ文化財の軌跡

本展は文化庁・宮内庁・読売新聞社が推進する「紡ぐプロジェクト」の一環として位置づけられており、収益の一部が文化財の修理事業に充てられます。
展覧会を公開の場とするにとどまらず、文化財の保存・修理を永続的に支援するこのサイクルは、前田育徳会が百年来掲げてきた「文化財を保存し後世に伝える」という使命と軌を一にするものです。
百万石の文化遺産は、次の百年、その先へと確かに受け継がれていきます。

イベント情報

前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kagamaedake2026/

会期:2026年4月14日(火)〜6月7日(日)
前期展示:4月14日(火)〜5月10日(日)
後期展示:5月12日(火)〜6月7日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)

関連URL

公益財団法人前田育徳会 公式サイト

http://www.ikutokukai.or.jp/

東京国立博物館 前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」

https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2740